軽くて丈夫、錆びないなどの特性上、あらゆる業界で重宝されているチタン。
しかし加工が難しい材料でもあります。
通常、チタンの曲げ加工ではフォーミングマシンを用いますが、つまんだ部分に加工痕が残ってしまいます。
美容・健康分野の製品など、肌に触れるチタン部品においては致命的な問題。
試行錯誤の末、曲げの精度も表面の美しさも両立するプレス加工に辿り着きました。
佐々木
「最初は何の疑いもなくフォーミングマシンで加工したのを覚えてる?」
信長
「そうでした。でも精度がばらついてしまって部品として組み込めないし、曲げ痕も残っている。これではお客様に出せるレベルでは無いという結果。そこで金型を作ってプレスで作ればいいんじゃないかと思いました。」
吉村
「実際に金型を作って、プレスで製品化。こちらとしては何も問題無いと思って試作品を提出しましたけど、大丈夫と思っていた曲げ痕のところでご指摘いただいたんですよね。お客様も僕らのような製造業と接したことがなかったし、線材にも詳しくなかったみたいで。もっと最初のヒアリングを徹底的にやるべきという反省点が見えました。」
佐々木
「試作品に満足できんということで、最初に立ち戻って聞くと、ただの部品じゃなく“からだに触れるもの”であることがわかったんやね。あのときお客様の意図が明確にわかったというか、なんで曲げ痕にまで細かくこだわってるのか、やっと合点がいった。」
吉村
「じゃあ金型を改良して痕がつかないようにしなければならない。形状はわかるけど、素材がチタンだから、これはちょっと難しい仕事引き受けたなぁって。」
吉村
「曲げ痕は残せませんからね。とことんプレスを改良して、痕が残らないように試行錯誤。凹凸を抑えなあかんから、かなり知恵をしぼって完成させました。金型ができたときは嬉しかったですね。」
佐々木
「お客様に納品して喜んでもらえたとき、線材加工屋の意地を見せることができたというか、これこそ物づくりの真骨頂やで!っていうね。えぇ思い出になった。あれでチタンの線材加工にも自信がついた。難しいものにチャレンジするのは、しんどいけど、やっぱり面白いね。」